「なるべく安く/多く手に入れたい!」って思うのが普通だと思うんだけど、結局心が満たされないのはどうして?
お金のために今までなんとなく働いてきたけど、働くって結局何なの?
こんな疑問に答えます。
大切なことは、ずばり「相手に”贈る”気持ちを大切にする」ことです。
普段生活する上で「なるべく安く/多く手に入れたい」と考えますよね。
私もその1人です。
また、会社で働く上でも「同じ給料ならなるべく楽をしたい」と考える人がいると思います。
私はそんな1人です。
「なるべく搾取されないように。」
「できる限り多くを手に入れられるように。」
でもそんな生活を続けていくと、だんだん生きづらさを感じてきてしまいます。
実はテイク(手に入れる)ではなくギブ(贈る)でものごとを考えることで、そんな生きづらさが無くなるかもしれません。
人は、いい”贈り物”を受け取ったときに「もらったもの以上のものでなんとかお返ししたい」と考えます。
”贈る”気持ちが増えれば心がより満たされ、受け取った人も次の”贈る”行動につながっていきます。
今回は影山知明さんの書籍「ゆっくり、いそげ」を読んで、感じたことを中心に解説します。
マッキンゼーを経て独立した影山知明さんは、「食べログ」でカフェ部門1位に輝いたことでも知られる東京 西国分寺にあるクルミドコーヒーの店主です。
「贈与のサイクルが人々の心を満たす。」クルミドコーヒーはそんなことを体現している異色の喫茶点だと思います。
それでは詳しく解説していきます。
現代は生きづらい世の中
今の世の中はなんとなく生きづらさを感じてしまいます。
なぜなら、お互いが搾取し合う/搾取されないように気をつかっているから。
普段の生活でも
たとえば、買い物をするとき。
生活コストをなるべく下げるために「できるだけ安く」「できるだけ多く」手に入れようと考えます。
今まで無料で使えていたサービスが急に有料になってしまったときに腹を立てることもあります。
仕事でも
あなたは何のために働いていますか?
仕事はお金をもらうためじゃない??
お金のためだけに働いていると、日曜の夜に仕事のことを考えて憂鬱になることもしばしば…。
明日からまた仕事か…。
また年功序列が根強い日本の会社では、給料は急には増えません。それなら
同じ給料をもらうならなるべくラクしよ!
と考えるのが合理的です。
「なるべく搾取されないように。」
「できる限り多くを手に入れられるように。」
今の世の中は、お互いがそんなことを考えているような気がします。
そのため、「なんとなく心が満たされない」「生きづらい」と感じてしまいます。
いい”贈り物”をもらったらお返ししたくなる
生きづらい生活から抜けだすためには、ずばり「贈与」がカギです。
人は負債を感じればそれを解消したくなる生き物。
いい”贈り物”を受け取ったとき、「もらったもの以上のものでなんとかお返ししたい」と考えるはずです。
人に何かを”贈る”(または”支援する”)ことで受け取った相手も同じように”贈る”ことを考えるようになります。
このように贈与のサイクルが回っていけば、心が満たされ生きづらさも解消するような気がします。
健全な負債感
書籍「ゆっくり、いそげ」の中で、影山知明さんがクルミドコーヒーの成功のキーワードとして次の3つをあげています。
- 消費者的な人格
- 受贈者的な人格
- 健全な負債感
①は、お客さんの「できるだけ安く食べたい」「できるだけ多くのものを手に入れたい」と考える人格のこと。
お店が販促のために行うポイントカードも、下手をするとお客さんの「消費者的な人格」にスイッチを入れてしまう可能性があります。
②は、いい”贈り物”を受け取ったときに「もらったもの以上のものでなんとかお返ししたい」と考える人格のこと。
もしお客さんが金額以上のモノ・サービスを受け取ったと感じたら、そこに”負い目”を感じます。
いいものを受け取っちゃったなー。なんとかお返ししたい!
この”負い目”のことを影山さんは「健全な負債感」と呼んでいます。
お客さんは”負い目”を解消するためにお返しの行動(お店にまた来てくれる・周りに宣伝してくれるなど)をとるようになります。
「受贈者的な人格」にスイッチが入れば、”贈る”ことが次の人につながっていくとも言えます。
「働く」ということ
会社で働く場合も「消費者的な人格」が大多数を占めていることがほとんど。
お互いがお互いを利用し合う関係に陥っています。
同じ給料を払うんだったらもっといい働きをしろ!
同じ給料だったらなるべく楽したい!
でも、会社をボランティア組織と捉えれば考え方もガラッと変わります。
影山さんはボランティアの三原則(①自主性②公共性③無償性)を会社に当てはめて、次のように説明しています。
「ゆっくり、いそげ」より
- 自主性:会社やお店の発展・生長を自分ゴトと捉え、自ら課題を見つけ、率先して挑戦する。働いているのは「誰かに言われたから」ではない。
- 公共性:そこでの働きは自分ではない誰か(他者)に向かっており、その人をよろこばせることが自分のよろこびでもある。
- 無償性:給料や時給は働く上でのきわめて重要な要素でもあるし、多くの場合それが職を求めるきっかけでもあるが、かといってお金のために働くわけでもなく(動機の無償性)、むしろそれは自分の仕事や貢献に対して周囲がもたらしてくれる対価と考える。
働くことを「自分の持てる力を使って会社に”支援する”」と捉えることによって、今までの労働観は大きく変わってきます。
影山さんは、「1人1人の個性をいかした働く人の満足度が高い経営を実現することが生産の量と質を高め、結果として組織としての高い売上や利益の実現につながり得る」と説明しています。
そんな風に働きたい!
とはいえ、「消費者的な人格」が悪いわけではありません。
お客さんとお店とが自分たちの利得を最大化させるよう行動することは、現在の資本主義社会において当然のことだからです。
自己利益を最大化させようとすることで、生産性が高まったり便利や革新が生まれています。
でも、ほんの少しでも”そうじゃない社会”があってもいいんじゃないか?と思うんです。
効率的ではないかもしれないけど、贈与のサイクルは人の心を満たしてくれる気がします。
相手に”贈る”気持ちを大切にする
テイク(手に入れる)ではなく、ギブ(贈る)でものごとを考える。
これが、今の生きづらい世の中を少しだけ生きやすくする方法かもしれません。
ギブで考えるようにすることが、「受贈者的な人格」にスイッチを入れることにつながります。
お金は「手に入れる」ための道具じゃない
お金は何のためにあるのか?と聞かれたら、何と答えますか?
モノやサービスを手に入れるためじゃないの?
影山さんは今の世の中を「自動販売機化する社会」と呼んでいます。
- ガソリンスタンド
- コンビニ
- ファミレス、など
モノやサービスの交換にどんどん人が介入しなくなり、自分が手にしたモノやサービスが誰かの仕事の結果だということが感じにくくなっていると。
どんどん技術は進歩しているはずなのに、なんだか中身は空っぽになっていくような…。
どんどんありがたみも無くなり、”お金”もモノやサービスを「手に入れる」ための道具だと考えてしまいます。
でも本当は、どんなモノやサービスにも「贈り手」の存在があります。
誰かの仕事の結果としてモノやサービスを「受け取る」ことができているわけです。
つまり、
お金とは:モノやサービスを「手に入れる」ためではなく、贈ってもらったものを「受け取る」ための道具
と捉えます。
モノやサービスとお金を交換する際に、「ありがとう」「いただきます」とお金を渡すようにすることが「贈り手」を想像することにつながります。
「テイク(手に入れる)ではなく、ギブ(贈る)でものごとを考える。」
些細なことかもしれませんが、人が持っている受贈者的な人格を常に忘れないようにする大切な考え方です。
まとめ
今回は、生きづらい世の中でも気持ちをラクにする方法について解説しました。
- 今の世の中は生きづらい。「お互いがお互いを使用し合う関係」に溢れている。
- 人は、いい”贈り物”を受け取ったときに”負い目”(=健全な負債感)を感じる。金額以上のモノやサービスを受け取ったお客さんは「受け取った以上のものでなんとかお返ししたい」と考える。結果、「またお店に来てくれる」「周りに宣伝してくれる」など次の”贈る”行為につながっていく。
- 贈与のサイクルが人々の心を満たし、生きづらい世の中を少しだけ変えてくれる。
影山知明さんの「ゆっくり、いそげ」は、働くことやお金の考え方など読んでいて非常に気付きが多い本でした。
今の世の中に少しでも生きづらさを感じたら、ぜひ読んでみて下さい。